野村監督の人材育成術
先週、元阪神・ヤクルト・楽天で監督を務められた野村克也氏の突然の訃報がありました。
私は中学生の頃から阪神ファン、サンテレビを付ければ既にビハインドという暗黒時代が中心の世代です。
なかなか希望の光が見えない(むしろ、強くなることが光なのか?という感覚もありましたが、、、笑)中、野村克也氏が阪神の監督になるということで、
「これから阪神が変わる!?」
という期待を感じたことを、今でも覚えています。
結果はアレでしたが、野村監督がチームを強くするために取り組んだことは、今でも色褪せない反省・改善・チャレンジの連続でした。
先程NHKの特番で、大豊選手と野村監督のやり取りが取り上げられていました。
大豊選手といえば、典型的な三振かホームランかという、博打的な選手です。
「代打、大豊」
とコールされた後に響くヒッティングマーチ
「ハイホー、ハイホー」(段々 「たいほーたいほー」 に聞こえてくる不思議)
が鳴り響くと、
「あ、、、」
となっていた世代です。
野村監督は当然ながら、そういったバッティングスタイルではチームにとって良くないと、大豊選手にもちかけます。
「どうしてもっと球を選び、塁に出るバッティングができないのか?」
しかし、大豊選手はなかなか野村監督の言うことを聞きません。
ホームランを打つためのバッティングを崩そうとしなかったのです。
そこで、野村監督は
「どうしてそんなにホームランを打ちたいのか?」
「なぜ、球を選ぼうとしないのか?」
と、大豊選手を理解するための質問に切り替えたそうです。
すると、
「王貞治選手に憧れて、台湾から日本に来たのに、それ以外のバッティングはしたくない」
「ホームラン王になりたい」
「フォアボールで出塁するのはカッコ悪い」「自分が活躍することがチームに貢献することだと思う」
といった、価値観の全く異なる考え方が返ってきたとのことでした。
そこで、選手の価値観を理解しながら、チームにとって何が必要か?を時間をかけて話し合い、相互理解を深めていく、という方法を取ったそうです。
この取り組みは、まさしく氷山モデルそのものです。
表面的に「やらないこと」「できないこと」に目を向けるのではなく、
その背景にある、
「何故やれないのか」
「何故やりたくないのか?」
といったメンタルモデル(価値観、考え、思い込み)に踏み込んで、選手に指導をしていたのです。
新聞やメディアなどからは、野村監督はボヤキでとっつきにっくいという印象の報道ばかり行われていましたが、
実際は、選手1人1人に目を向けて、メンタルモデルを理解しながら人材育成をする監督だったのです。
そういう意味で、野村監督は「弱者の戦略」ばかり目に付きますが、
人材育成でも最先端の取り組みをしていた、
といっても過言ではないと、今更ながら感じています。
私個人的には誕生日が同じということもあり、
とても尊敬する方でしたので、突然の訃報が残念で仕方ありません。
1つの時代が終わりを迎えた、
それぐらいの喪失感を感じています。
(それぐらいファンだったんです(T ^ T))
と、いうことで、しばらく落ち込みたいと思います。